私の知人にAさんという人がいた
どんな伝承か
校長や指導主事を務め「アララギ」の歌人でもあった知人のAさんは、語り手と共に長野のある保養所にいたが、都合で急に伊那の自宅へ帰り、一年余り消息が絶えていた。昭和五十四年十二月八日の朝方、語り手はAさんの夢を見た。黒いマントに黒い杖という姿のAさんに導かれ、山寺の裏道を歩いて雪原に出ると、Aさんは杖で地面に長方形を描き、「これを掘りたい」と言ってシャベルを渡し、途中まで一緒に掘って去っていった。翌朝も同じ夢の続きを見て、掘り上がった穴の先にある小屋で温泉の湧く光景を見せられた。目覚めた後、Aさんがその日のうちに亡くなっていたことを知ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考・昭和50年代~60年代(推定))
松谷みよ子『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』を小話単位で全513話収録。夢のお告げ・予知夢、火の玉、ぬけ出した魂(離魂)など、心と生死の境にまつわる現代の民話を全国から採集し収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明482話・市区町村判明386話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。