狼っ言うなには、昔から、よう私等(※ルビ:わしら)聞
どんな伝承か
話者の萬谷史郎が子どもの頃に聞いた話である。奈良県吉野郡東吉野村では、狼は恐ろしい獣でありながら、恩義をよく弁えていたという。ある月夜、狼が村の在所へやって来て、しきりに鳴いてやまなかった。訝しんで覗いてみると、猪を食ったせいで歯に骨が刺さっていたらしい。そこで「噛みつかぬと約束するなら牙を抜いてやる」と請け合って抜いてやった。すると翌朝、大きな猪が村の門に運ばれていたと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考・1970年代~1980年代推定)
松谷みよ子『現代民話考 10 狼・山犬、猫』を小話単位で全541話収録。狼・山犬・猫にまつわる現代の民話・怪異譚(送り狼・化け猫など)を全国から採集し収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明535話・市区町村判明490話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。