日野郡下蚊屋の木地屋道歌譚
どんな伝承か
出雲に近い日野郡米沢村大字下蚊屋は、今は漆器の産地として知られている。小椋広太郎という家がこれに携わる旧家で、先祖の小椋尊房は江州日野の木地屋であったが、多数の同業と連れ立ってこの地へ移って来た。慶安中のことというが、二十六、七代前ともいうから、どちらかが誤りである。近江の方では蛭谷の大岩氏にこんな話が伝わる。中興の祖とする助左衛門重次が元和六年に国々を巡ってこの村へ来て木地職の小屋を訪ねると、我々はもう木地屋をやめて今は塗師屋になっていると、至って等閑な待遇をするので、「これたかの流れの末はさがりかや木地屋をぬしとぬつたりはげたり」と詠んで見せた。皆々感じ入って心得違いを悟り、改めて先例を守ることになったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第4巻』を全822話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。