天城の山男は消えつつある
どんな伝承か
五月十九日、駕籠を雇って天城を越した。青葉の盛りで、藤は少なく躑躅はあり、石楠花は盛りで人家にも植えている。閑古鳥が鳴いていた。御料地の中には色々の人が住んでいるが、五万分一図を見るとこの辺はどの村にも属していない。峠の近くにも二三の人家があり、木を挽いていた。天城は二十五、六年前までは暗い森林であったが、追々に伐って明るい山となった。ただし大鍋の奥より猫越に越える所などは今も木深く、蛭も少しおり、猿などもいたずらをするという。山男の消息はすでに絶えつつある。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第3巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第3巻』を全158話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。