能登・加賀は牛、能登は馬
どんな伝承か
六月七日、金沢から八時半の汽車で七尾へ向かう道中の見聞である。河北郡の海岸は広々とした砂地で桃の名所であった。鹿島郡では杉材が産物の一つとされるが、山にも里にもこれという杉の林はない。能登部は古府中の地の北に接する広い台地の原野で、所々に新墾がある。この辺りは馬を産し、加賀は牛、能登は馬と自ずから分かれるようである。党派心は中々強く、どの村にも必ず役場派と非役場派の対立があり、郡役所にも党人の拮抗が見られる。目下は所得税調査委員の選挙のために烈しい競争をしているという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第3巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第3巻』を全158話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。