加賀様の隠し路と御堂の椀家具
どんな伝承か
やや珍しすぎて作りごとかとも思う話を一つ聞いている。加賀様の隠し路といって、前田侯が万々一の場合に領内へ逃げ帰る途が用意されていたという話である。昔、山中共古が語ってくれたもので、表向きの記録にあろうはずもなく、知らぬと答える人が多いことも判っている。山中の話では、その路筋には若干の距離を隔てて相応な手当がしてあった。たとえば村の片脇に観音薬師などの御堂があって、その建立には無名氏の寄進があった。堂の仏壇の下は塗籠になっていて、その中には一通りの椀家具が入れてある。そういうものを辿って行けば、おおよその道筋が判るというのであった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第2巻』を全331話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。