弘法大師と濫僧ロウソウの奇聞
どんな伝承か
佐渡を旅していたとき、赤玉の村から五人の男が私の荷物を運びながら、道々面白い話をしてくれた。それによれば、佐渡では仏堂を守る道心者のことを「ロウソウ」と呼ぶのだという。老僧ではなく、濫僧という古い言葉であるらしい。むかしある家の門先にロウソウが立って物を乞うたとき、こうした人の中には時に偉い人が姿を変えて訪れることがあるから粗末にしてはならぬと言うと、その言葉を聞いたロウソウはたちまちいい気になって「大師あらはれたり」と言った。傍にいた一人が「何を言うか、お前はどこそこ村のロウソウではないか」と叱りつけると、悪びれもせず「また大師あらはれたり」と言ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第2巻』を全331話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。