伊良部島・登佐の妻と神谷の徳
どんな伝承か
伊良部の島の漁夫、登佐という者の話である。登佐には艶やかな妻があった。ある時、干瀬に出たこの男が岩の穴に手を差し入れて蛸を捕ろうとすると、その手がどうしても抜けないうちに潮が大いに満ちて来た。独りで悲しんでいるところへ、神谷の仁屋徳という者が通りかかり、命を救う礼にお前の女房を譲ってくれと言う。死ぬよりはましと承諾して戻り妻に話すと、妻は一笑して、約束なれば是非もなし、吉日を選んで婚礼の用意をせよと言った。数月の後、妻は徳を招き、二人が夫婦になったという歌を島々に流行らせ、約束も破らず男も棄てさせず、登佐とは元の夫婦でいてはどうかと説いた。徳も感心して従い、ユンタばかりが永く残ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第1巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第1巻』を全451話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。