糸取りむじな
どんな伝承か
その昔、清哲町にある鳳凰山の南御室小屋に、夜になると一人の妖怪の老婆が現れ、何か唄を口ずさみながらビューンビューンと糸取り車を回していた。ある夕方、猟師がそっとのぞくと、老婆が顔中の皺を一度に動かしてニタリニタリと笑う様子は実にものすごかった。猟師は気づかれぬよう近づいて狙いをつけ引金を引いたが、そのときすでに老婆の姿はなく、手応えもなく、ただ行灯が消えただけであった。次の夜も同じ老婆が糸を取っていたので、今度は妖怪の近くに見える行灯を狙って撃つと見事に当たった。断末魔の悲鳴が聞こえ、灯も消えた。近づいて見ると、怪物の正体は今まで見たこともない大きなむじなであったという。
原典より
その昔、清哲町に在る鳳凰山の南御室小屋に夜になると一人の妖怪老婆が現れて、なにか唄を口ずさみながら「ビューンビューン」と糸取り車を廻していた。—— 韮崎市の民話伝説(昭和四十二年(1967)刊) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
韮崎市の民話伝説(昭和四十二年(1967)刊)
山梨県韮崎市(穴山・穂坂・清哲・神山・大草・藤井・竜岡・中田・円野ほか各町)に伝わる伝説・民話を、木/石/水/塚/坂・峠/山/谷・沢/屋敷跡・城址/祠堂/その他 の各部門に分類して集成する。武田信玄・勝頼ら甲斐武田氏や新府城にまつわる伝承、日本武尊・源為朝・弘法大師の旧跡、御神木や霊石・霊池の怪異、稲荷・地蔵・観音の霊験、狐狸むじな・河童・鬼の昔話など、韮崎の地に根ざした怪異・霊験・由来譚を地区つきで網羅する。