河童のきず薬
どんな伝承か
昔、絵見堂のある農家の池に河童が住んでいて、夜ごと厠に現れては怪しげな手を出して着物を引っぱった。主人が正体を見届けようと包丁を持って厠へ行くと、案の定手が出たので、素早くつかんで切り落とした。魔物は叫んで逃げ去ったが、夜中に激しく戸を叩く者がある。開けると河童が立っていて、人にさわると妖術が得られると聞いて悪さをした、切られた片腕を返してほしい、礼に人間にもよく効く疵薬の処方を教えると懸命に願った。主人が腕を返すと、河童は薬方と秘法を伝えた。その薬は近郷に評判となり、この家は大金持ちとなって、家伝薬として最近まで伝わったという。絵見堂の間の川には、河童石と呼ぶ石が近ごろまであった。
原典より
昔ある農家の池に河童が住んでいて、夜な夜な (かわや)にあらわれて、怪しげな手を出して、着物を引っぱった。—— 韮崎市の民話伝説(昭和四十二年(1967)刊) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
韮崎市の民話伝説(昭和四十二年(1967)刊)
山梨県韮崎市(穴山・穂坂・清哲・神山・大草・藤井・竜岡・中田・円野ほか各町)に伝わる伝説・民話を、木/石/水/塚/坂・峠/山/谷・沢/屋敷跡・城址/祠堂/その他 の各部門に分類して集成する。武田信玄・勝頼ら甲斐武田氏や新府城にまつわる伝承、日本武尊・源為朝・弘法大師の旧跡、御神木や霊石・霊池の怪異、稲荷・地蔵・観音の霊験、狐狸むじな・河童・鬼の昔話など、韮崎の地に根ざした怪異・霊験・由来譚を地区つきで網羅する。