山の背競べ
どんな伝承か
山梨県北巨摩郡大泉村に伝わる。大昔、日本は一面の大平原であったが、ある夜、各所に音もなく皺が寄って高くなり、足下から火と泥が噴き出して積もり、山ができた。中でも目立って高いのが八ヶ岳と富士山で、両者は背比べを始めた。先に生まれた八ヶ岳は伸び続け、ついに天竺まで頭が届いたが、突き抜けようとした途端に頭の三分の一が折れてしまった。八ヶ岳は悔しさに十六の目から涙を流し、その涙が溜まって南の縁を破って流れた跡が今も残る。鞍馬山から来た大天狗が同情し、小天狗に命じて赤岳の頂に社を建て、折れた頭を南東の山腹に置いて心優しい姫に祀らせた。その森を斎し森といい、後に美し森と呼ぶようになったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第5巻』所収の「文化叙事伝説」全104話(千葉・山梨・神奈川・埼玉・東京=関東甲信)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。