鯨山出現観音
どんな伝承か
相差の里に住む武士の家人で通称「浜の平」という者が、観世音が立ち現れ、われは今海上にいる、早く伴って汝の家に祀れと告げる夢を見た。以来毎日海岸をさまよい歩いたある日、一天にわかにかき曇り、一匹の大鯨が泳いで来て、その背に丈一寸八分の黄金色に輝く観音仏が乗っているのがはっきり見えた。驚いて逃げ帰ろうとしたが霊夢を思い出し、走り寄って仏像を奉じると、大鯨はたちまち化して石になった。里人はこれを鯨石と呼び、今も鯨崎の先端下の海中にあるという。数日後、早くわれを青の峰にうつせとの霊夢を得て青峰山正福寺へ運び、本堂の正壇に祀った。浜の平は姓を青山、名を半兵衛と改め、裔孫は今も青山姓を名乗るという。
原典より
相差と宇塚との間から、東の方へ五町ばかり突出した大崎があり、古い頃はここに熊野神社が鎮座していたし、梵潮寺所蔵の円成法師の書写した大般若経の跋文によって名高い八幡社はこの八幡社の境内社であった。—— 日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第9巻』所収の「文化叙事伝説」および「自然説明伝説」全100話(奈良・大阪・和歌山・三重=近畿南部/紀伊)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。