夜叉ヶ池
どんな伝承か
夜叉ヶ池は美濃と越前と滋賀の三つの境にある。昔、岐阜県に安八大官という大金持ちがいて、田んぼをたくさん持っていた。夏の日照りで田は地割れし、稲の穂も出ず、百姓は困り果てた。大官が自分の田を見て回っていると、小さな蛇が一匹いた。そこで、龍にもなるという力があるなら雨をくれ、と呼びかけた。蛇はどこかへ行き、二、三日すると雨が降りだして田が生き返り、皆が喜んだ。ある日、立派な武士が大官の家を訪れ、先日田んぼで約束した蛇の化身であると名乗り、娘をもらいたいという。娘は素直に承知し、生まれたときから因縁があったのだろうと言って脇の下を見せると、そこに鱗が三枚あった。娘は櫛やこうがいなど化粧道具を持って池へ行き、身を沈めた。一年に一度里帰りを許す約束であったが、寝室を見るなという言いつけを親が破ってのぞくと、八畳間いっぱいに大蛇がとぐろを巻いていた。姿を見られた娘は二度と人間に戻れないと言い、大蛇のまま帰っていった。その通った跡が揖斐川だという。今も日照りで雨が欲しいときは、餅や酒ではなく櫛やこうがいなど化粧道具を盆に載せて池へ押し出す。中央まで行って渦を巻いて沈めば雨がもらえ、沈まなければもらえないという。
原典より
〈高木―「赤松ヶ池」 柳田―「蛇池」〉美濃と越前と滋賀の三つの境にあって、そのわけは、昔、岐阜県に安八大官という大金持ちがあった。—— 日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第8巻』所収の「文化叙事伝説」および「自然説明伝説」全133話(滋賀・京都・兵庫=近畿)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。