貉和尚
どんな伝承か
安永九年(一七八〇)十一月十日、坂城に一人の老僧がふらりと現れた。年の頃七十ほど、背丈五尺余り、髪は赤く歯は鋭く、眼は紫石のように光る異様な風采だったという。相州鎌倉の大法寺東堂から来て諸国を巡礼中と語り、前夜は下戸倉駅の伴右衛門宅に、この晩は坂城の松根屋(公庵の家)に泊まることになった。食事や入浴の際には必ず屏風を立て、家人さえも決して近づけなかった。犬をひどく恐れる様子だったという。夜は主人と俳句を詠み合って過ごし、翌朝丁重に礼を述べて上田方面へ去っていった。後になって、この僧は中山道の追分宿で数匹の犬に襲われ、かみ殺されたことが判明する。実はこの老僧、古い貉が化けた姿だったのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
坂城町誌 上巻(民俗編)――伝説(坂城町(編)・坂城町誌・自治体史(民俗))
『坂城町誌 上巻(自然編・民俗編)』所収の伝説。長野県坂城町に伝わる村上義清ゆかりの伝説を採録する。