古屋敷を耕作する森本家で
どんな伝承か
三田市上青野の字鍔坂口にある「ギオン田」は祇園田でなく儀右衛門田の転化で、儀右衛門は代々襲名した役付百姓の森本家である。その屋敷跡を耕作する森本隆夫家では、毎年盆に熱い茶を鉢に一杯供える。今を去る四十余年前、隆夫の弟が怪病にかかり、昼間は異状なく遊ぶのに夜半になると急に四十度を越す高熱を発して「お茶をくれ、お茶を飲ませ」と大声で叫び、母が茶を沸して飲ませると熱が下って翌日はけろりとしていた。何日も続くので拝み屋に占ってもらうと、古屋敷を耕作しているからそこの仏が茶湯を求めているのだと教えられ、その通りにするとその夜から平常に戻り、弟の怪病は治ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
兵庫県民俗調査報告8――伝説(兵庫県(編)・兵庫県民俗調査報告・自治体史(民俗))
『兵庫県民俗調査報告8』第10章口頭伝承所収の伝説。兵庫県三田市周辺・千丈寺山麓に伝わる集落発祥・神社・廃寺・城跡の伝説と怪異を採録する。人を神として祀る南千丈寺山頂の松住大権現の磐座、焼き討ちされた千丈山観音廃寺、疫病神を追い払う戸守の鍾馗、法事帰りに重箱を襲う狐狸の怪、人の尿を好み小便たごを空にする狼話3題などを収める。各事例を日付・場所・人物・状況のマーカー付き事例単位で網羅した、摂津・三田の伝説と狐狼・鍾馗信仰の資料。