火打石で一年を過ごす社守
どんな伝承か
甲良町金屋では、氏神である大将軍の祭を取り仕切る社守をマツリガミと呼ぶ。昭和三十六年に選ばれた川村正男は三十歳。役に当たった者は、前年から祭日の九月二十八日まで丸一年、家族と離れてただ一人で暮らす。縁先に杉皮葺きの掘立小屋が建てられ、生活の場は自宅の奥座敷とその小屋だけに限られた。食事も風呂も自分の手で用意し、献立は一汁一菜。竈も風呂も煙草の火もマッチやライターは使えず、すべて火打石で起こす。肉を口にせず、女を近づけることも許されない。祭の当日、黒い麻の法衣をまとうと、そこから先は一言も発しない暮らしに入るのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の迷信(今野圓輔・今野圓輔・民俗学・昭和(高度成長期))
民俗学者・今野圓輔が高度成長期の日本に残る迷信を社会派ルポとして告発・分析した一冊。序章では、静岡県掛川市で異性双生児を畜生腹と恥じた母親の母子心中事件、青森県三本木市でキツネ落としと称して女を火あぶりにした殺人事件など、迷信が現代も殺人・心中を生む『黒い習俗』を突きつける。