前庭に集まった若者の脛の縦傷
どんな伝承か
昭和十五年ごろ、話者が十八歳だったときのことである。春先だったかはっきりしないが、肌寒い時季だったという。仲間が数人、友人の家の前庭に集まって何やら話し込んでいたところ、誰も何もしていないのに、そのうちの一人が突然すねに痛みを覚えた。すぐに足を確かめると、血も出ないまま、五、六センチほど縦に深く切れていた。柏崎市半田の男性が語った、かまいたちの話である。
原典より
何をしたわけでもなかったが、突如友人の一人が足の脛に痛みを感じた。—— かまいたち談義(大竹信雄・高志路1998年8月号) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
かまいたち談義(大竹信雄・高志路1998年8月号)
『かまいたち談義』は、大竹信雄がかまいたちについて論じた民俗学の論考である。北蒲原郡笹神村と柏崎市・刈羽郡小国町で集めた、かまいたちにかかった体験九例を挙げ、辞書や『北越奇談』などの説明から構え太刀説・つむじ風説・真空説・筋肉の急な動きによる生理現象説を整理する。「はじめに」から「おわりに」まで六節に分け、体験例の共通点から境界性を論じ、妖怪かまいたちの性格と、『東遊記』や『北越奇談』に見える越後七不思議との関わりを考える。