日食の夕暮れに脛が裂けた鬼ごっこ
どんな伝承か
昭和十年ごろ、笹神村大室の商店の母屋のあたりで、四、五歳の女の子たちが鬼ごっこに興じていた。夏の日食があった日の夕暮れどきだったという。逃げ回るうちにつまずいて転んだ女の子は、右の脛に鋭い痛みを覚えた。見ると肉が裂けているのに血は一滴も出ていない。痛みをこらえて店先の川に架かる橋を渡りかけたとたん、急に血があふれ出した。泣き声に驚いた屋根葺きの職人が、押し切りで切ったのではないかと騒ぎ立てたほどである。医者にかかったが、鎌で切ったような形の傷はいまも脛に残っているという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
かまいたち談義(高志路1998年8月号・1998年8月)
本書は新潟県を中心に報告されたかまいたち(妖怪)に関する談義である。9つの具体的な事例を紹介し、昭和初期から平成期にかけて記録された裂傷被害について詳述している。特徴的なのは、かまいたちが与える傷が鎌で切ったような裂傷であるにもかかわらず、ほとんどの場合血が出ない点である。事例は柏崎市と笹神村に集中しており、被害者は主に子どもから青年であった。