夢が予告した戦死者との遭遇
どんな伝承か
昭和二十一年四月、指宿静枝は、呉の復員局へ夫の俸給を受け取りに行く前夜、不思議な夢を見た。うすぎたない国防服に戦闘帽、リュックサックを背負った人が自分を揺り起こし、明日、呉から汽車で帰るときは、後ろから二輌目の右側、うしろから二番目あたりの座席に坐ってくれと言う。背負ったリュックの前側の紐が、今にもちぎれそうになっているのがはっきりと見えた。翌日、三男の速雄と列車に乗ると、その座席には見知らぬ紳士が坐っていた。海田駅で人が降りて空いたころ、向洋駅で汽車が止まる。真っ先に戸を開けて入ってきた人を見て、静枝は驚いた。リュックサックの前紐の傷み方まで夢のとおりだったのである。だが夫ではなく、似ても似つかぬ他人であった。その復員兵は紳士と語るうち、「僕の上司に指宿という人がありました」と口にした。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の四次元(鈴江淳也・心霊・四次元・昭和)