三か月ほど前のことじゃ
どんな伝承か
三か月ほど前のことじゃ、と賀島飛左は語る。納戸で横になっていると「お母さん」と言って息子の久男が入ってきた。見ると、やせこけてぼろぼろの服を着ている。「お母さん、のどがかわいたので水を飲ませてほしい」と言うので、台所でコップに水を汲んでやったが、渡そうとするともう久男の姿はなかった。久男は「腹がへったので茶漬けが食べたい」「背中をさすってくれ」などと言って、時々帰ってくることがある。久男は戦死などしていない、まだどこかで生きているように思える――と飛左は言う。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。