靖国神社脇に捨てられた出刃包丁
どんな伝承か
深夜、客を乗せて江東区の方へ走っていると、白ナンバーのセダンが荒っぽく横を追い越していった。靖国神社の脇にさしかかったとき、その車の後部窓から何かが投げ捨てられ、ヘッドライトに光って路上へ落ちた。出刃包丁だと思った運転手は、常盤一丁目で客を降ろすとすぐ引き返し、記憶を頼りに路上を探して、刃の欠けた、血痕らしきものの付いた出刃包丁を拾い上げた。近くを警邏していた巡査に差し出すと、巡査は一歩退いて自分の所轄事項ではないと言い、派出所へ届けると答えた。結局、何の事件も起こらなかった。
原典より
自分の所から二十里ほどの後藤野の話。—— 現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和〜平成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和〜平成)
松谷みよ子『現代民話考 ― 偽汽車』を小話単位で全525話収録。汽車・船・自動車などの乗り物にまつわる現代の民話・怪談を全国から採集。狐狸が汽車に化ける偽汽車、船幽霊、タクシーに乗る幽霊などを地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明496話・市区町村判明359話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。