大島郡の瀬戸で、悪天候のため停泊していた船で…
どんな伝承か
ある夜、船乗りが瀬戸を通りかかったが風と潮が悪く、瀬戸口に錨をおろして停泊していた。夜半、船頭の隣に寝ていた船子がうんうん唸り出すと、そのたびに船玉様の扉がきしみながら開き、うなり声が止んで船子は眠りに落ちるということが三度続いた。船頭が目を覚まし船子の周りを見ると、ぐっしょりと濡れている。船子を起こして尋ねると「何かが来い来いと誘いに来て眠らせてくれない」と言い、外を調べると錨綱に水死体がかかっており、それが船子にしがみついていたのだった。水をかけて洗い流すと、朝まで安らかに眠れたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和〜平成)
松谷みよ子『現代民話考 ― 偽汽車』を小話単位で全525話収録。汽車・船・自動車などの乗り物にまつわる現代の民話・怪談を全国から採集。狐狸が汽車に化ける偽汽車、船幽霊、タクシーに乗る幽霊などを地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明496話・市区町村判明359話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。