大島
どんな伝承か
蒲野村三蒲の者が渡海船で、ある時化の晩に小松の瀬戸を下ろうとしていた。瀬戸には漁船が時化に遭って風と潮に翻弄されていたが、いくら叫んでも声は嵐に呑まれ、渡海船はその漁船をやりきってしまった。船頭が舳へ走ると男が一人しがみついて叫んでいる。助けたくとも嵐で手の下しようがなく、誰も知るまいと水棹で男を海中へ突き落として何くわぬ顔をしていた。以後、航海のたびに男が舳へ立つので恐ろしくなり船乗りをやめた。年を経て瀬戸貝を採りに潜ると浮かんで来ず、底の岩に抱きついて死んでいた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和〜平成)
松谷みよ子『現代民話考 ― 偽汽車』を小話単位で全525話収録。汽車・船・自動車などの乗り物にまつわる現代の民話・怪談を全国から採集。狐狸が汽車に化ける偽汽車、船幽霊、タクシーに乗る幽霊などを地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明496話・市区町村判明359話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。