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田原村某、三人ヲ殺シ屠腹ノ話

所在地山口県岩国市田原
年代安政年頃
登場寅吉、久保八右衛門、検使に出張した役人
出典岩邑怪談録

どんな伝承か

安政年頃、田原村に寅吉という相応に財産のある者がいた。他村に嫁いだ姉が折り合い悪く揉めているのを気の毒がって常に言い止まず、何事も気にかけて様子が常でなかった。ある日、家にあった刀をふと引き抜き、座にいた妻と子の男女三人を斬り殺し、母親と姉娘にも斬りつけて傷を負わせた。この二人は早く逃げて床の下に隠れた。寅吉はその場で同じ刀を以て自ら腹を竪横十文字に掻き切り即死した。近所や村の者が集まって母と姉の児を助けたが、座中は鮮血狼藉で目も当てられぬ有様であったという。自殺とはいえ人殺しの罪が大きいとして、田原村の川原に小屋を掛け、役人が出張して死骸を打首にした。狂気の所為とされた。

原典より

安政年頃馘棋前、田原村二寅吉卜云者アリ。—— 岩邑怪談録(広瀬喜尚(編:藤田葆/増補:今田純一/付録:静間密)・天保年間成立・明治期増補(原本明治四十三年成稿)/昭和51年(1976)岩国徴古館刊) より引用
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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

岩邑怪談録(広瀬喜尚(編:藤田葆/増補:今田純一/付録:静間密)・天保年間成立・明治期増補(原本明治四十三年成稿)/昭和51年(1976)岩国徴古館刊)

岩国藩士・広瀬喜尚(仁兵衛、天保頃の博識家)がまとめた郷土怪談集を核に、明治期に今田純一(散木園主人)が二十余条を増補(追加)し、さらに藤田葆が古老聞き取りの『続怪談録』・歴史的瑞兆を集めた『実事談』・幼童の変死記録を集めた『変死部』を継ぎ、巻末に静間密の怪火・投石怪五話を付録とした、岩国・錦見・横山周辺を舞台とする総合怪異録。

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