手を引いた娘が木の枝に変わる
どんな伝承か
高知県高岡郡、檮原分の越知面に、貧しいが親孝行な若衆がいた。母が病で寝込んでおり、薬代にも困っていた。ある日、隣の村へ母の薬を買いに出かけ、その帰り道、山を越えねばならないうちに日が暮れ、雨も落ちてきた。真っ暗な道で少し休んでいると、下の方から美しい娘が上がってきて、越知面の兄さんかと声をかけた。芳生野(東津野分)から帰る途中で心細いから連れて行ってほしいという。若衆は手を引いて山道を下り、柔らかい手と器量のよさに、嫁にもらってもよいと悦に入っていた。ところが我が家の戸口で見ると娘はおらず、太い木の枝をぎっしり握っていた。母は、あの峠にいる古狸の仕業だと言ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1970年代~1980年代)
松谷みよ子『現代民話考 11 狸・むじな』を小話単位で全376話収録。狸・むじなにまつわる現代の民話・怪異譚(化かし・化け)を全国から採集し収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明372話・市区町村判明317話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。