三之公八幡平**(3)
どんな伝承か
話者の西浦房太郎によれば、奈良県吉野郡川上村の三之公八幡平あたりには、昔たくさんの狼がいたという。その鳴き声はすさまじく、四十年ほど前に向かいの前山でウォー、ウォーと鳴いたときは、障子の紙がビリビリと震えたほどであった。狼はよく鹿をとって食べ、少し食べては二日ほど近くで寝ていた。人が食べ残しの鹿を少し持ち帰るときは、礼のしるしに履いていた草鞋へ塩をのせて鹿のそばに置いた。だが獲物をすっかり持ち帰ると、狼は怒って家の近くまで来て、一晩中激しく鳴いたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考・1970年代~1980年代推定)
松谷みよ子『現代民話考 10 狼・山犬、猫』を小話単位で全541話収録。狼・山犬・猫にまつわる現代の民話・怪異譚(送り狼・化け猫など)を全国から採集し収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明535話・市区町村判明490話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。