長野市上千歳町の酒造業・菊屋山崎家の娘である祖母の時代の話
どんな伝承か
長野市上千歳町で酒造業を営んでいた菊屋山崎家の娘であった祖母が、十五歳で嫁ぐ前、まだ店が全盛だったころの出来事だという。戸隠に秋葉山をまつる宝光社という、火伏せで名高い社があり、そこの岸本という宿坊に神通力を持つ天狗が棲んでいて、菊屋へ酒を買いに来ていた。この天狗はどれだけ酒を飲んでも少しも酔わず、持参した小さな瓢箪はどれだけ酒を注いでも溢れることなく何升でも入ってしまうという不思議な力を持っていた。番頭も小僧も恐ろしさのあまり、入るだけ酒を注いでやったところ、天狗はそのお礼にと火伏せの神をまつり呪文を唱えてくれ、その後この店は不思議と火事にならなかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考・1970年代)
松谷みよ子『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』を小話単位で全532話収録。河童・天狗・神かくしにまつわる現代の民話・怪異譚を全国から採集し、地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明530話・市区町村判明477話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。