昭和六十年のこと
どんな伝承か
長野県埴科郡坂城町の多田ちとせさんは、昭和六十年、病気で三日間意識不明のあいだにこんな夢を見たという。すみれやたんぽぽの咲く春の野原を流れる、白いミルクの川をたらいの舟で流れていると、そこへ黒いタールの川が流れ寄ってきた。すると猫が百匹ほど現れてタールの流れを止めようとしたが、なかなか止まらない。猫たちはやすで(ムカデに似た、野辺山の列車を止めるという伝説の虫)を雲のように連れてきて、力を合わせてタールの川を堰き止めた。うららかなミルクの川を楽しく下っていったところで目が覚めたといい、家で飼っている猫が自分を助けにきてくれたのだと感じ、その頭をなでたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考・1970年代)
松谷みよ子『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』を小話単位で全532話収録。河童・天狗・神かくしにまつわる現代の民話・怪異譚を全国から採集し、地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明530話・市区町村判明477話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。