駿州奥仙俣の草原を割る山男
どんな伝承か
山中笑が前年に駿州田代川の奥へ行ったとき、奥仙俣の杉山忠蔵という人が、父から聞いたといって語った話である。父は若い時から猟が好きで、毎度鹿を追って山奥に入ったが、真に恐ろしくまた不思議だと思ったことは生涯に二度しかない。一度は山中の草原が丸太でも曳いて通ったように一筋倒れ伏し、前の山の樹木もまた一筋に左右へ分かれて次第に頂上へ押し登って行ったこと。今一度は土の上に非常に大きな人の足跡を見つけ、なお奥へ入ると大岩に足を踏み掛けて山陰へ入る大男の後姿を見たことだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第4巻』を全822話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。