玉藻を刈って田に入れる手業
どんな伝承か
西に開いた紀州の加太の湊は、どこから吹き寄せるのか、奥の方は海の藻ばかりで、朽ちた土は沈んで干潟となり、片端はもう要塞兵の練兵場にさえなっていた。海の草は岸に打ち寄せると忽ち白く枯れ、風の後などは堆く積まれている。諸国の入海の岸に住む民が玉藻を刈るという昔からの手業は、これを何の用途に充てたのかを考えてみた者もないらしいが、それは恐らく田に入れて土を新たにするためであった。そうした隠れた海との交渉も、今はもう絶えてしまったのである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第2巻』を全331話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。