鹿島神主の呪咀と番場の宿
どんな伝承か
幸若舞曲『信田』の一段である。将門の子将国の裔にあたる信田の御台所は、下野小山の小山太郎行重が将門の菩提を弔うのを喜び、旧臣浮島太夫の諫言を退けて信田の庄の半分と重宝・地券までも贈った。ところが小山は所領の莫大さに欲心を起こし、これを横領したうえ御台所と子の信田小太郎を放逐する。母子は旧臣を伴って都へ上り訴訟を起こそうとするが、これを聞いた小山は鹿島の神主に彼らを呪咀させた。そのため近江の番場の宿で母御台は重病に陥ってはかなくなり、旧臣たちも小太郎を見限って四散したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
将門伝説——民衆の心に生きる英雄(梶原正昭・矢代和夫・(平将門伝説の研究書))
梶原正昭・矢代和夫『将門伝説——民衆の心に生きる英雄』を、論考の節単位で全67事例として収録した研究書(地域伝説集ではない)。平安中期の平将門(承平天慶の乱)をめぐる伝説を、英雄の死と伝説の誕生(冥界・調伏・怨霊・首の怪異・七人の影武者・妙見信仰・石化)、落人たちの運命(将軍太郎良門・如蔵尼の堕地獄と救済・滝夜叉姫・桔梗塚の寵妃・後裔と将門遺跡)、将門伝説の展開(馬の文化・関東一円の分布圏・文芸化・首塚の祟りと再評価)として論じる。