西行戻り岩
どんな伝承か
一世の歌聖西行法師は諸国歌行脚で球磨に行く途中、球磨川の風光をめでつつ白石の辺を通っていた。崖の上から流れを眺めていると、大きな岩陰で一人の娘がわたを洗っているのが眼についた。法師は川に下りて何を洗っているのかと問い、わたですと即座に答えたので、そのわたが欲しくて売るかと重ねて尋ねた。娘はすかさず、白石の瀬にすむ鮎の腹にこそうるかといえるわたはあるなれ、と一首の古歌を歌って返答した。西行は大いに驚き、こんな山深い里の賤女さえこの歌を知っていたとは恥ずかしくなり、球磨に来た道を引き返して行った。今も白石と小口の中間に西行帰岩と称する大きな岩山がそびえている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第14巻』所収の「文化叙事伝説」「自然説明伝説」全75話(熊本・宮崎・鹿児島=南九州)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。