鉄屑を撒かれた蛇渕の大蛇
どんな伝承か
鍛冶ヶ野という山奥に、昔、鍛冶屋のあった所がある。そこの猟師が何十貫もある大猪を取ったが、ひとりでは運べないので、昔から蛇がいるという蛇渕の水際に置き、人を雇いに村へ戻った。四、五人雇って戻ってみると、蛇渕から大きな蛇が出て、猪を半分ほど飲み込んでいた。怒った猟師は、蛇の嫌う鉄屑をふご二杯ぶん鍛冶屋から拾って来て、蛇渕にまいた。すると渕は下から湧き上がるようにうねり返り、にわかに曇って雷が鳴り、雨が打つように降った。二時間ほどで大水となり、山崩れが来て家も流れ、猟師の部落は野になってしまった。鍛冶屋が野にしたようなものだというので、今に鍛冶ヶ野という土地の名になっている。
原典より
<高木——「世田山鎮護の魔神」 柳田――「蛇ヶ渕」>鍛冶ヶ野って山奥に、昔、鍛冶屋があった所があるのし。—— 日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第12巻』所収の「文化叙事伝説」全139話(香川・徳島・愛媛・高知=四国)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。