鈴鹿山の立烏帽子と田村五郎利成
どんな伝承か
或説に鈴鹿御前は天照大神の乙姫だといい、また由来は定かでないともいう。中ごろ坂上朝臣田村五郎利成という人があり、伊勢の鈴鹿山に立烏帽子という鬼女がいて往来の人の命を奪い財宝を掠めるので、勅を受けて退治に向かった。行方が知れぬまま年月が過ぎ、仏神に祈ると山の景色が一変し、池の中に三つの島が現れて殿中に美しい女がいた。利成は艶書を矢に結んで射やり、返書を得て契りを結ぶ。女に頼まれて陸奥の悪露王という鬼を鏑矢で射殺したが、王命に背く恐れを覚えて女を都へ差し出したところ取り逃がされ、鈴鹿山へ戻った女のもとへ忍び通って正林という子をもうけた。夫婦の没後、女を鈴鹿御前、利成を田村堂にまつったと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。