与三様
どんな伝承か
少し昔の話。押上に与三というあわて者で臆病な男がいた。隣村へ村使いを言いつかったが、秋祭りを過ぎたころで日は羽黒山にかかっていた。隣の伝八じいさんが、暗くなると夜盗打ちが出るから急がないと斬られるぞと言ったので、与三は嫌がりながら出かけた。村の入口まで来たとき、いきなり頭を打たれた。頭を押さえると指の間からぬらぬらしたものがつき血だらけだったので、夜盗に斬られたと思い、六尺褌を外して頭に巻き、人殺しだと怒鳴りながら家へ駆け込んだ。村医者の源庵のもとへ担ぎ込み、巻いた布をはがして洗うと大きな柿の種が出てきた。熟柿が落ちたのだと皆で笑い、以後その柿の木を与三様と呼ぶようになった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
氏家町史 民俗編――伝説・昔話(氏家町(編)・氏家町史・自治体史(民俗))
『氏家町史 民俗編』第5章所収の伝説・昔話。栃木県氏家町(現さくら市)に方言の語り口で伝わる口承を採録する。