大猪が落ちた崖ししがけ
どんな伝承か
戦の絶えない昔、那須と塩谷の攻め合いに嫌気がさした先祖が武士をやめ、鬼怒川べりに来て百姓となった。仲間が集まって六軒になり、これが押上村の始まりだという。ようやく崖の上を開いて田畑ができたころ、どこからか巨大な猪が現れ、すばしこく駆け回っては陸稲から芋や大根まで食い荒らした。鉄砲玉は効かず、落とし穴も罠も破られ、村人は困り果てた。ところがある時、調子に乗ってまっすぐ突進してきた猪は止まれず、崖から鬼怒川へ真っ逆さまに落ち、河原の砂利に頭を突っ込んで死んだ。村人は大喜びし、猪の落ちた崖を「ししがけ」と呼ぶようになったという。
原典より
ほんで猪めのぼこじた崖を「ししがけ」っつうごどにしたんだど。—— 氏家町史 民俗編――伝説・昔話(氏家町(編)・氏家町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
氏家町史 民俗編――伝説・昔話(氏家町(編)・氏家町史)
『氏家町史 民俗編――伝説・昔話』は、氏家町の町史民俗編のうち、第五章「くらしと言語」の第一節「伝説・昔話」と第二節「ことわざ、俗言」の初めを収めたものである。昭和七年版『氏家郷土誌』の数編と町史編さん室などが集めた話から選んだ二十七話を土地の方言の語りに直して載せ、勝山城にまつわる歴史伝説や地蔵の信仰伝説が多い。各話の末に方言を主とする語注を付け、ことわざの節では日常に使われた俗言を頭の音(あ・い・う)ごとに並べる。