首を斬られた使いと鉢かぶせ杉
どんな伝承か
昔、愚かな殿様が家来を連れて上阿久津の野原へ狩りに出たが、賢い獣たちはまるで姿を見せず、殿様は一日中駆け回って腹を立て、空腹にもなった。家来は昼飯を持ってきておらず、あわてて城へ使いを走らせたが、城でものんびり米をとぐ始末で、お鉢を抱えた使いが戻ったのはずっと後だった。怒った殿様は使いの首をはね、鉢を蹴飛ばして城へ帰ってしまった。哀れんだ村人は使いの亡骸を葬り、そばに転がっていた鉢をかぶせて塚にした。そこに捨てられていた杉の箸から根が出て大木に育ち、村人はそれを鉢かぶせ杉と呼んだ。杉はやがて枯れたが、天を突くように立ち続けたという。
原典より
ほして、ほごさ捨てられてだ杉の箸から、えづん間にが、根っこがほきできて、やがて、大木になったんだど。—— 氏家町史 民俗編――伝説・昔話(氏家町(編)・氏家町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
氏家町史 民俗編――伝説・昔話(氏家町(編)・氏家町史)
『氏家町史 民俗編――伝説・昔話』は、氏家町の町史民俗編のうち、第五章「くらしと言語」の第一節「伝説・昔話」と第二節「ことわざ、俗言」の初めを収めたものである。昭和七年版『氏家郷土誌』の数編と町史編さん室などが集めた話から選んだ二十七話を土地の方言の語りに直して載せ、勝山城にまつわる歴史伝説や地蔵の信仰伝説が多い。各話の末に方言を主とする語注を付け、ことわざの節では日常に使われた俗言を頭の音(あ・い・う)ごとに並べる。