西谷と東谷に現れる一つ目一本足
どんな伝承か
比叡山には、目も足も一つきりの妖怪が長く棲みついていて、西谷と東谷のあいだでよく人と行き合ったという。もっとも、人に害を加えることは決してなかった。ある法師は、月が隈なく照る夜にこの妖怪を目にしたが、それは前の山を足早に駆け下りていったと伝えられる。深山を歩き回る者が足一本では不自由きわまりないはずだが、その身で山野を自在に駆けてみせるところこそ妖怪の妖怪たるゆえんなのだろう、と語られている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・昭和)
武田静澄『河童・天狗・妖怪―民俗随筆』。全国の妖怪伝承を天狗・河童・ざしき童子・妖怪心理の四部で随筆風に集成する。天狗篇では天狗の団扇・誕生、祈禱くらべ、天狗に憑かれた女、幻術つかい、神かくし、天狗にさらわれた人々(お庭番のゆくえ・天から降った男・ふたり夫・天狗六兵衛・おかんの末路)、神かくしにあう心理、ぐひん餅と山荒れ、天狗の相撲場などを収める。