上諏訪のお婆
どんな伝承か
上諏訪の山手にある岡村の南沢に、太郎兵衛婆さという老女が住んでいた。ある日、霧が峰近くの山へ薪を採りに行くと、どこからか天狗が現れた。婆さがおびえていると、天狗は懐から手紙を取り出し、向こうの山にいる天狗のもとへ届けてほしいと頼んだ。言われたとおり目を閉じると、体が軽く浮くように感じ、気づくと別の天狗の前にいた。その天狗は手紙を読み、上諏訪はいま火祭りの最中で大火事だが、お前の家だけは残しておいたと告げた。婆さが急いで戻ると村はすっかり焼けていたが、なぜか彼女の家だけは風向きが変わって焼け残っていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・昭和)
武田静澄『河童・天狗・妖怪―民俗随筆』。全国の妖怪伝承を天狗・河童・ざしき童子・妖怪心理の四部で随筆風に集成する。天狗篇では天狗の団扇・誕生、祈禱くらべ、天狗に憑かれた女、幻術つかい、神かくし、天狗にさらわれた人々(お庭番のゆくえ・天から降った男・ふたり夫・天狗六兵衛・おかんの末路)、神かくしにあう心理、ぐひん餅と山荒れ、天狗の相撲場などを収める。