浦太夫の墓所での義太夫
どんな伝承か
和泉国日根野郡佐野村に浦太夫という義太夫節の名手がおり、五畿内十人の語り手の一人であった。ある日浪華からの帰途、夜に入って同国泉郡布野という所を通ると人が道連れになり、ぜひ我が家で一曲語ってくれと請うた。伴われた先は大きな農家で、酒肴を勧められ、集まった大勢の前で数段を語った。ふと見回すと人は一人もおらず、東の空が白みはじめ、そこは草ぼうぼうの布野の三昧であった。狐に魅されたと気づき、数日患い臥した。後に、その夜近村の婚礼の酒肴が残らず失せ、三昧に魚骨杯盤が散乱していたと聞き、狐が芸に感じて実の酒食でもてなしたのだろうと取り沙汰された。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・大正・昭和初期)
博物学者・日野巌の古典的妖怪研究『動物妖怪譚』の前半(總論〜多爾具久)。