幸之宮土手の人魂
どんな伝承か
幸之宮から和耕にかけての中川の土手には竹が茂り、昼でも人通りがほとんどなかった。天気の悪いまっ暗な晩、夜学会の帰りに友だち四人で幸之宮の土手まで来ると、闇で道がわからなくなった。手探りで進むうち、前方に丸く赤い月のようなものが見えた。近づこうと懸命に歩くと、その火はすうっと遠ざかっていく。年寄りから聞かされていた人魂だと気づいたときは、背筋が寒くなった。この土手にはよく人魂が出たという。
原典より
そのそばへ行こうとして一生懸命近付くと、火はスーと遠去かってしまった。—— 八潮市史 民俗編――伝説・怪異(八潮市(編)・八潮市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
八潮市史 民俗編――伝説・怪異(八潮市(編)・八潮市史)
『八潮市史 民俗編――伝説・怪異』は、埼玉県の『八潮市史』民俗編から伝説の部分を収めたものである。市内の各地区で聞き取った稲荷火や狐の嫁取り提灯、狢・河童・蛇の話、徳川家康の鷹狩りにちなむ地名や塚の由来、地蔵や人魂、念仏橋の話を、話者の言葉づかいのまま地区名を添えて並べる。概説のあとに自然伝説・歴史伝説・信仰伝説の三つに分け、話の群ごとに『日本民俗事典』や『武蔵の伝説』などを引いた参考を付ける。