盗み読まれた縁切り祈願の紙片
どんな伝承か
板橋の縁切り榎への信仰は今もさかんで、多くの人が願かけに訪れる。榎を管理する榎大六天神奉賛会は参拝記念スタンプを用意しており、参拝者はスタンプを押した紙片に願いごとを書き、おみくじのように結んで祠前に納める。奉賛会は年に一度これを集め、四月二十九日に鎮守氷川神社の神職を招いて祠前で修祓し焚きあげる。祈願文は圧倒的に女性による離縁祈願が多い。だが祠前に納められた祈願文をひそかに盗み読み、祈願者を脅迫しようとした者もかつてあった。そのため奉賛会は、紙に名は書いてもよいが住所はいっさい記さぬよう訴えている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
西郊民俗 縁切り榎(西郊民俗シリーズ・昭和中期~後期(推定1960年代~1970年代))
本書は東京都板橋区に存在した縁切り榎を中心とした江戸時代から現代に続く民間信仰の全容を描いた民俗学文献である。縁切り榎は旧中山道板橋宿の樹齢古い榎の木で、「縁つきいやの坂」という語呂合わせと、富士講中興の祖食行身禄が妻子との縁を切った場所という伝説により、男女の悪縁を断つ霊験があるとされた。樹皮の粉末を別れたい相手に飲ませるまじないが実践され、絵馬奉納も行われた。皇女の婚礼行列もこの地を避けて通行した。