樹皮を煎じて飲ませる縁切りの法
どんな伝承か
『十方庵遊歴雑記』は、誰が始めたともなく行われるようになった作法を書き留めている。訪れた者は榎のかたわらの茶店の娘や子どもに頼んで皮を剥いでもらい、それを家へ持ち帰って水から煎じ、当人に知らせぬまま飲ませる。すると男女の縁は切れ、夫婦の仲もおのずと倦んで、離別に至ることが神のようだと言いはやされた。願いがかなえば絵馬を掛け、幟を立てる者もいた。また大酒飲みには、同じ皮を別に煎じて酒に混ぜて飲ませると、たちまち酒を嫌う下戸になると言い伝えられていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
西郊民俗 縁切り榎(西郊民俗シリーズ・昭和中期~後期(推定1960年代~1970年代))
本書は東京都板橋区に存在した縁切り榎を中心とした江戸時代から現代に続く民間信仰の全容を描いた民俗学文献である。縁切り榎は旧中山道板橋宿の樹齢古い榎の木で、「縁つきいやの坂」という語呂合わせと、富士講中興の祖食行身禄が妻子との縁を切った場所という伝説により、男女の悪縁を断つ霊験があるとされた。樹皮の粉末を別れたい相手に飲ませるまじないが実践され、絵馬奉納も行われた。皇女の婚礼行列もこの地を避けて通行した。