今も樹皮を削られる三代目の榎
どんな伝承か
板橋の縁切り榎は、初代の榎が枯れたのち植え継がれ、一九六九年には三代目が植えられて修祓式が行われた。現在の榎は中仙道から一本東の旧街道沿い、石神井川に架かる板橋から北西二五〇メートルほど、板橋区本町一八番地にあたる。三代目の榎は樹高四、五メートルに育つが、その幹はあちこち樹皮を剥がれて削られており、今でも縁切りを願って削っていく人が絶えない。かたわらには大六天の小祠がまつられ、初代の古株の一部を誰でも削れるよう配慮するなど、地元の奉賛会が管理しているという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
西郊民俗 縁切り榎(西郊民俗シリーズ・昭和中期~後期(推定1960年代~1970年代))
本書は東京都板橋区に存在した縁切り榎を中心とした江戸時代から現代に続く民間信仰の全容を描いた民俗学文献である。縁切り榎は旧中山道板橋宿の樹齢古い榎の木で、「縁つきいやの坂」という語呂合わせと、富士講中興の祖食行身禄が妻子との縁を切った場所という伝説により、男女の悪縁を断つ霊験があるとされた。樹皮の粉末を別れたい相手に飲ませるまじないが実践され、絵馬奉納も行われた。皇女の婚礼行列もこの地を避けて通行した。