スクールバスの前に立つ亡母
どんな伝承か
昭和五十三年ごろ、新殿小学校で障害児学級を受け持っていた教師の話である。担任していたK子は障害も軽く、気の利くよい子だった。六月のある日、K子の母が過労がもとで亡くなり、姉妹が泣きながら知らせに来た。背をやや丸め、髪はただ束ねただけで、なりふりかまわず働き通した人だったという。それから一年ほど経った日、教師はK子の家の近くまで家庭訪問に行き、帰りに空のスクールバスに乗った。前方の道端に、病院帰りのように顔色の悪い女が小さな手提げをさげて立ち、バスを避けている。顔を上げたその人は確かにK子の母だった。通り過ぎて振り返るともう誰もおらず、運転手は誰も見なかったと答えた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。