城内
どんな伝承か
佐賀県佐賀市城内の回答者の話。昭和二十年五月、旧満州国通化省通化街に私の事務所があった。当時三十四歳の私は急性肺炎と診断されて意識不明となり、三昼夜が過ぎた。その夜、暗い道を歩くと見渡す限りの花畑で月がこうこうと照っていた。あまりの美しさに嘆声を上げながら前へ行こうとすると、急に首筋をつかまれて空中につり上げられた。振り返ると、三年前に佐賀の自宅で高血圧のために亡くなった父であった。父は闇の中を私を掴えたまま飛び、故郷佐賀の高木町にある願正寺の裏の墓地の前へ降ろすと、穴を掘って私を首だけ残して埋め込んだ。遠くで呼ぶ声が聞こえ、眼が覚めた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。