手術中に霧の先へ見えた川
どんな伝承か
昭和五十一年、高校二年の春休みに手術を受けたときのこと。麻酔が体に合わなかったらしく、急に心臓が速く打ちはじめた。本人は手術を前に緊張しているのだと思っていたが、次第に頭がぼんやりし、看護婦や医師が遠くで騒いでいるように聞こえた。気づくと目の前に濃い霧が立ちこめ、目を凝らすと百メートルか二百メートルほど先の低い所に、川らしいものが時折きらめいて見える。その向こう岸か川のあたりに、上半身だけの人影があった。霧は白い部分と薄い桃色の部分があったという。内科医が駆けつけてくれなければ助からなかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。