人力車を後押しする車夫の亡妻
どんな伝承か
深川の不動様の裏手から木場の北を抜け、斜めに東北へ向かう道がある。五、六歳のころ、語り手は父に連れられて不動様へ参ったが、父が酒を過ごし雨も落ちてきたので人力車で帰った。家に着いて代金を渡すとき、父は、これはおかみさんの分だと言って余分に払った。すると車夫が悲しげに、また出ましたか、と応じた。近ごろ幼い子を残して妻を亡くしたが、その妻が雨の晩には必ず現れて車を後ろから押すのだという。父は、暗くて姿は見えなかったが、車夫の足音とは別に小刻みな軽い足音を聞いたと母に語った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和〜平成)
松谷みよ子『現代民話考 ― 偽汽車』を小話単位で全525話収録。汽車・船・自動車などの乗り物にまつわる現代の民話・怪談を全国から採集。狐狸が汽車に化ける偽汽車、船幽霊、タクシーに乗る幽霊などを地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明496話・市区町村判明359話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。