昭和三十〜三十五年頃の話
どんな伝承か
昭和二十九年の夏、梅雨明け前の豪雨の中、夜中に急用ができた若い婦人が岩村町から恵那市へタクシーを頼んで出かけた。旧岩村街道を走っていたが、豪雨のため橋が流失していたのが暗さと雨で分からず、タクシーもろとも川へ転落した。翌日から捜索したが遂に見つからなかった。その後、深夜に空車を走らせていると、転落場所付近の小沢という所で若い女がタクシーを止めて「乗せてくれ」といい、行き先を聞くと「岩村」と消えるような声で告げる。バックミラーを見ると誰もおらず、後部座席だけが水で濡れていた。橋の付近に地蔵を建てて供養すると出なくなったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和〜平成)
松谷みよ子『現代民話考 ― 偽汽車』を小話単位で全525話収録。汽車・船・自動車などの乗り物にまつわる現代の民話・怪談を全国から採集。狐狸が汽車に化ける偽汽車、船幽霊、タクシーに乗る幽霊などを地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明496話・市区町村判明359話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。