御殿場の本屋に並んだ河内介の本
どんな伝承か
昭和十八年ごろ、徳川夢声は映画のロケで御殿場に来ていた。小田急で伊勢原へ出た日、駅前の旅館で休んでいると、物知りのロケマネの老人が人を殺した者はろくな最期を遂げないと言い出し、田中河内介の話を始めた。夢声が以前に怪談会で聞いた、河内介の話をした客が急死した件を話すと、老人は全身に悪寒がしたと言って井戸水で頭を冷やしに飛び出した。翌日、帰京前に御殿場の町を歩いていると、講談本ばかりの本屋に、田中河内介顕彰会が出した難しい河内介の本が四冊並んでいたという。
原典より
本屋といっても、半分おもちゃを並べて片側に棚があって、それに本がつまっているというような本屋で、その店へ入ってヒョイと見ると、田中河内介という本が四冊並んでいる。—— 私は幽霊を見た(東雅夫(編)・MF文庫ダ・ヴィンチ) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
私は幽霊を見た(東雅夫(編)・MF文庫ダ・ヴィンチ)
『私は幽霊を見た――現代怪談実話傑作選』は、東雅夫が編んだ怪談実話のアンソロジーで、メディアファクトリーのMF文庫ダ・ヴィンチの一冊である。平山蘆江・火野葦平・佐藤春夫・徳川夢声・遠藤周作・柴田錬三郎から石原慎太郎・新倉イワオ・稲川淳二まで、作家や文化人が自ら見聞きした幽霊や怪異を書いた文章を集める。目次には二十三篇と編者解説が並び、水木しげる・山田野理夫・桝井寿郎の座談「怪談詮議」や中岡俊哉「イタコの謎を追う」の抄録も含む。